脳は怠け者です。それは紛れもない事実です。脳は、最小限の仕事だけをしたいと思っています。そして、これこそが、人が習慣を作り出す大きな理由です。

習慣とは、考えずに行う日常の行動のことです。朝にまず歯磨きをするのは、寝ている間に増えた細菌を口から取り除きたいと意識したからではありません。何年もの間、歯を磨くということが朝の習慣になっているからです。

では脳は、いつ歯を磨けばよいのかがどうして分かるのでしょう? それは、行動が様々な合図によって習慣化されているからなのです。 例えば、朝、まず目覚ましが鳴り、次に、床に足をおろして洗面所へ歩いて行き、洗面台の前に立つ、といった一連の動作が、歯を磨くきっかけ (合図) となるのです。脳は、より重要な作業にエネルギーを確保する必要があるため、このような行為を習慣化するのです。

「習慣」は専門的には「刺激反応行動タスク」と呼ばれます。 脳の奥深くにある「大脳基底核 (だいのうきていかく) 」は、習慣を行うことで活性化されます。習慣は無意識状態で行われるため、モチベーションとの相互作用はあまりありません。そのため、 やる気があったとしても、習慣を変えるのは非常に難しい場合があります。

良い習慣を新たに加えたり、悪習慣を無くそうとする場合、環境を変えることで、脳が習慣を無意識に行う状態から抜け出すことができます。ある習慣を取り除きたい場合、まずその行動のきっかけを特定して、それを変える、または無くす必要があります。仕事帰りに飲みに行く代わりにジムに行きたい場合は、オフィスを出る前にスポーツウェアに着替えると良いでしょう。テレビを見ずに、本をたくさん読みたい場合は、リモコンの上に本を置いて、リモコンを視界からなくしましょう。そうすれば、テレビの電源を入れるには別のきっかけが必要になります。

習慣を変えることは簡単ではありません。 脳はこれまで繰り返してきた習慣を、生涯実行し続けるようにプログラムされています。そのため習慣を変えるためには、忍耐強く取り組む必要があります。一晩で習慣を変えることは無理かもしれません。しかし、繰り返し努力を行えば、きっと変えることができるでしょう。